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赤ちゃんポスト>開設4年目 救った命,養育支援に課題

 熊本市の慈恵病院が,親が育てられない子どもを匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)を開設し,今年5月で4年となる。預けられた子は09年9月までで51人。捨てられていたかもしれない命を救ってきた一方で,ポストに入れられた子を育てていく支援体制の乏しさも浮き彫りとなった。熊本県や市は「一自治体で解決できる問題ではない」と,国に妊娠,出産,育児にかかわる制度の見直しを求めている。


 熊本県の検証会議が09年11月にまとめた最終報告によると,ポストに入れられた子は,07年度17人▽08年度25人▽09年度9人。1歳以上も2人いて,少なくとも1人は自分がポストに入れられた記憶があるという。

 身元が分かった子は39人。親の住所は関東以南の全国に散らばるが,地元・熊本県はゼロだった。親にポストを使った主な理由を聞いたところ,「戸籍に入れたくない」が最多の8件で,生活困窮7件,不倫5件と続く。

 子どもたちは児童相談所の保護下に置かれ,児童養護施設に送られる。現在も施設で暮らす子は31人。12人は里親に育てられ,7人は親元に帰った。

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 病院は当初,同様制度のある諸外国のように,ポストに入れられた子どもが新しい家庭の養子になることを想定していた。だが,養子縁組が成立した子は51人中1人にとどまる。

 日本の養子制度には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の二つがある。実親が育てられなくなった場合,家裁の審判を経て戸籍上も養親の実子になるのが後者だ。しかし,特別養子縁組は原則として実親の同意が必要になる。虐待や育児放棄などの場合は例外的に不要だが,ポストに子を入れるという行為には明確な基準がない。後から親が名乗り出てくる可能性もあり,審判の申し立てに至っていないのが実情である。

 そこで,病院は方針を変えた。ポスト周辺で利用者らしき人がいれば積極的に声をかけ,ホームページ上からは「匿名で預かる」との文言を削除。09年1月には扉の表示を「赤ちゃんになにかをのこしてあげて」から「開ける前に,インターホンを鳴らして相談してください」に改めた。

 利用前に相談してもらえれば,公的機関への引き継ぎや養子縁組の案内など,選択肢が広がる。親が判明すると,養子縁組が成立する可能性も高まる。「ゆりかごよりも相談を」。同院の蓮田太二理事長が繰り返し訴えてきた言葉は,切実さを増している。

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 検証会議の最終報告は「ポストを使わないで済む制度」を国に強く求めている。その一つが匿名で妊娠相談を受け,出産や子の保護も引き受けるシェルターの整備。従来の行政相談では緊急対応までは難しいとして,各地の産科病院に設置して国が連携や質の確保を担うことを提案している。

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 赤ちゃんポスト 
 親が育てられない子を匿名で受け入れる施設で,親が建物の外側から子を入れて扉を閉めると,施設の職員が子を保護する仕組み。慈恵病院はドイツの施設を参考に,妊娠・育児の相談業務と併せて運営している。ドイツでは法的位置付けはないものの国内約90カ所に設置,米国では親が職員に対面して子を託す形で,全州が制度化している。

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